独学で立体裁断を学ぶにはPart.1 [基礎]
四角い布をボディに巻きつけて、自由に好きなシルエットを作る。それがドレーピング(立体裁断)です。
これはひとつの技術だと思っています。いわゆる職人さんのお仕事です。
ですから、洋裁や型紙の知識が全く無い人がすぐにできるような簡単な技術ではありません。
もし簡単だったら、パタンナーの採用条件に「立体裁断ができる人」という項目は無くなるでしょう。
途中で挫折しないために、最初に厳しいことをあえて書いておきます。
わたしは現場の経験と実態から、立体裁断を学ぶには実技の多い専門学校へ3年間通うのを勧めています。
それでも学校へ行って学べるのは基礎の部分だけです。
そんな技術を独学のみで身につけるというのはとても大変なことであるという覚悟がまず必要です。
『それでも頑張って勉強してみたい』そんなあなたへ。
数をこなせば簡単な補正はできるようになると思います。
更にその先に立体裁断があります。焦らずにひとつひとつを身に付けていってください。
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ここで紹介している学ぶ順番は学校で学ぶ順番とは全く違うものです。
教えてくれる人がいない場合は、布の扱いが間違っていても誰も指摘してくれません。
それを自分自身で気づくためにどうしたら良いのか?
色んな順番や方法があるとは思いますが、わたしの経験からはこのようになりました。
本当はもっと知らなくてはいけないことがあります。
でもそれは学んでいく中で自分自身で気づくべきことでもあります。
気づいた時。それは自分が一歩成長した証しです。
そしてそれを自分自身で乗り越えた時、更に成長するのです。
この繰り返しこそが独学なのです。
また、立体裁断を理解するのには平面製図ができなくてはなりません。
「トワルを作ったら、なんとなくこんな形になった」ではそれが正しい形なのかがわからないからです。
独学の場合は誰も間違いを指摘してくれません。自分自身が気づくために色んな角度から、
トワルや型紙を見る力を養ってはじめて正確な立体裁断ができるようになります。
立体裁断を独学でできる範囲のお話をわたしの経験から少し。
(注意:ここでお話しするのは仮縫いの話しではありません。)
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1.布帛で練習してからニットを
ニットは生地が伸びやすく生地がとても動くので、最初はどこが正確なのかが見つけにくいです。
まずは布帛でしっかり練習していきます。
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2.ボディにきちんと洋服を着せる
パタンナーとして意識して着せる練習のことです。ボディと洋服の位置関係に注目します。
前後の中心が合っているのは当然ですが、以下のことなどを注意して着せます。
衿や衿ぐりはボディとどのような位置関係になっているのか?
肩線はどこにきているか?
バストやウエスト、ヒップの位置は?
ゆるみはどこにどれだけ入っているか?
ダーツの位置はどんな場所に入っているか?
脇線はどんな感じになっているか?
袖はどれくらい前に振られているか?...など。
ボディに洋服を着せる時によくある失敗は「後に抜けている」状態に着せてしまうもの。
後衿ぐりが背中へ落ちていて肩線が後にずれている状態では、
正確なシルエットを確認することはできません。
また、正確に着せることによって「ゆるみ分」や「ギャザーの流れる方向」がしっかり見えます。
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3.ボディに着せた状態での採寸
メジャーを用意します。
肩巾、着丈、身幅、袖丈、袖巾などの寸法をボディに着せた状態で正確に採寸する練習をします。
簡単なことですが、この作業が正確にできるために必要なのは「生地の地の目を見る目」です。
地の目というのは訓練すると自然に見えるようになります。
地の目が見えないといつまで経っても立体裁断が上達しません。
日常の生活の中でも「生地を見たら地の目を見る」これも訓練のひとつです。
色々な生地の地の目を気にするようになると、縦地の目と横地の目の違いも見えるようになります。
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4.型紙をシーチングで裁断し、ピンで組み立てる
この練習を繰り返し行います。とても大切な練習になります。
まずシルクピンを用意しますが、さび止めの油がたくさん付いている場合があるのでよく拭きとってから使います。
シーチングを既存の型紙を使って机の上ではなく、ボディの上で組み立てる練習をします。
地の目線や基準線はしっかり入れておいてから始めます。
単純なシルエットのものがいいです。ダーツくらいは大丈夫ですがパネルラインは止めましょう。
どこからピンを打つ?どの順番でピンを打つ?地の目はどこを通っている?
どこにゆるみが入っている?縫い代はどうする(どっちに倒す)?
考えることがいっぱいあります。これらのことが当たり前にできるようにならないと、
立体裁断どころの話にはなりませんので何度も繰り返し練習します。
出来上がったら採寸して寸法を確認します。
組み立てたトワルがシワシワになっていませんか?変に伸ばしたりしていませんか?
分解して型紙の上に乗せると生地が伸びている部分が一目でわかります。
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5.補正をしてみる
トワル組みがボディの上で上手にできるようになったら、生地の扱いが上手になっていると思います。
いつも地の目を意識することを忘れずに立体上で補正をやってみましょう。
最初は、身幅を出したり、狭くしたり。ダーツの分量を変えてみるなど。
このとき、常に頭の中に平面の製図を頭に浮かべ「あのラインがこう変わる」と意識することが大切です。
立体で補正をした後に平面に写して寸法が合っているかを確認します。
前後の脇線の長さなど同じ長さでなくてはいけない部分の寸法や、変に伸ばしていないかなど。
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6.脇線を探す練習
上で組み立てた型紙と同じものを使って脇線を探す練習をしてみます。
このとき、袖ぐり線と脇線を入れずにやるのがポイントです。
目安になるものが無い状態にするのに脇の縫い代は適当に多めに付けておきます。
たった脇線を探すだけでも最初は苦労します。
身頃にはどれだけのゆるみがあって、前後身頃の釣り合いも体感することになります。
脇線というのは床へ向かって真っ直ぐに落ちるのが正しい線です。
これだ!と思って決めた線が型紙と同じ位置にありましたか?
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7.平面と立体の関係を理解する
平面の製図を見た時に立体の形を想像できるようになるのが理想です。
逆もまた真で、立体を見た時に平面のあのラインがこの形になると理解することも大切です。
この関係を理解するのに常に平面とトワルを何度も見比べることを忘れずに。
また、立体裁断に偏ってしまうと忘れてしまいがちなのが「縫いやすい線」です。
色んなことを意識しながら平面と立体の関係を理解するためにも、
トワルをミシンで縫うという作業も大切になってきます。
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8.シーチング以外の生地でトワルを組む
本番の生地でトワルを作らなくてはならない時もあります。
テロンとした生地など扱いにくい生地を選び、それでトワルをピン打ちしてみます。
シーチングの場合とは違った「ピンの打ちにくさ」や「生地の落ち感」などを体感することになります。
ここまで出来るようになったら立体裁断に必要な下地が揃っているはずです。
では、いいよ立体裁断にチャレンジです
→ 独学で立体裁断を学ぶにはPart.2 [実践]
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