立体裁断(ドレーピング)の型紙とは

「立体裁断の型紙」そんな言葉を聞いたことがあるかと思います。
立体裁断を英語で言うと『draping(ドレーピング)』となります。
ちなみに、パタンナーという言葉は和製英語なのでそんな英語はありません。
『pattern maker(パターン メーカー)』というのが正しい英語です。


立体裁断(ドレーピング)というのは技術と感性と経験の融合でもあり
パタンナーによって少しずつ解釈が違うものです。
「こんな風に感じているパタンナーもいる」そんな感覚で読んでもらえたらと思います。



*立体裁断って何?*

ボディ(人台)に布を当てて、洋服のシルエットを表現して型紙を作る方法です。
特に女性の体はバストは出ていて、ウエストは引っ込んでいてと
とても凹凸がある形をしているので、婦人服で多く用いられます。

この言葉に対して「平面裁断」という言葉があります。平面製図のことです。
紙の上だけで数字(寸法)に基づいて作られる型紙を言います。


洋服が国内で普及し始めた頃はオートクチュールや注文服が主流で
立体裁断の洋服は一般市民にとって高値の花。限られた人しか着ていませんでした。
そこで、もっと日本でも洋服を広めようと海外でパターンの勉強をしてきた人が
日本人体型に合った原型を作りましたが、最初は複雑なもので普及しませんでした。
時代が変わり戦後、海外で勉強してきた人が更にわかりやすい平面裁断の原型を作り
ドレメ式や文化式と呼ばれているものが型紙ブックとして登場します。

平面裁断は立体裁断よりも経験が浅くてもできるということで
特に日本では平面裁断が普及していき、現在も一般に広く使われていますが
『立体を知った上での平面』と『立体を知らない平面』では
出来上がる型紙のラインが違うものになるというのも覚えておくといいと思います。


*立体裁断って素晴らしいの?*

趣味で自分の洋服を作るのに型紙を作ると、寸法は合っているのに
着心地が悪かったり、ラインがきれいでないことがあります。
そんな時に立体裁断の必要を感じるのではないでしょうか。

立体裁断は紙の上では見つけにくラインを見つけることができます。
特に型紙でカーブになる部分、袖付けがなどがいい例かもしれません。
他にはドレープのあるデザインや微妙な丸み、フィットさせる服の場合や
ストレッチ素材などの特殊な生地の場合も立体のほうが良かったりと
様々な場面で用いられています。

立体裁断の経験が豊富な人は、頭の中に立体の状態をイメージできます。
そういう人は全てを立体でしなくても平面でもかなり作れます。
細かい微調整だけを立体でやったほうが効率がいい場合もあるということ。

なので、立体裁断だけがすばらしい!というのはちょっとオーバーかなと
わたしは思います。
立体裁断を知った上で作られた型紙は素晴らしい。これは本当です。


こんなことを書いているわたしはドレーピングが大好きです。
なので立体裁断の良さは十分に知っているけど、平面でも作業することがあります。
今までの経験から平面上で求めるラインが見える時は平面でします。
でも迷ったときは、ドレーピングしたほうが早いのは言うまでもありません。


*平面裁断って良くないの? no.1*

メンズでは平面裁断が多く活用されます。それは男性の体型は女性に比べて凹凸が少なく平面的な構成をしているから。(その代わり、本格的なオーダースーツはかなり細かい採寸をします。)なので平面だから悪いとは限りません。

ただし、平面だけしかできないとなると、変わったデザインや新素材に苦しむ場面が多くなり、何度も補正&修正が必要になることも。

「立体には立体の良さがあり、平面には平面の良さがある」それだけのことです。


バンタンで習っていたときに先生に言われたのは
「立体裁断で作っても最後は紙に写す。ということは、平面展開でもそれと同じものができるはず」
言われてみたら「なるほど!」と思いませんか?

先生が言った言葉は究極ですが、どの技法を使うは手段でしかありません。
重要なのは求める洋服が作れる型紙を作ることであり、もし同じ型紙が出来上がるのならば、
その人が得意の手段で構わないと思います。
ただしデザインによっては立体でやってしまったほうが早く
「速さ」も求められるメーカー勤めの場合は、立体が推奨されることが多いのです。


*平面裁断って良くないの? no.2*

パタンナーで転職する場合は「立体裁断ができる人」という条件が付くことが多いです。この条件を逆に考えると、立体裁断ができないパタンナーも実際にいるということではないでしょうか。

ということをふまえて、立体裁断ができるパタンナーというのは「格が上」という扱いをされます。そんなところから、平面なんて・・・と見下した言い方をするパタンナーがいるのも事実です。誰でも簡単にできる技術ではないことをできる自負、プライドがそう言わせるのでしょう。

わたしは立体裁断ができますがそういう感覚は持っていません。平面がどうのと言うよりも、立体ができるか?がパタンナーとしては重要なので、平面を見下す必要は無いと思うからです。


*立体裁断と平面裁断で出来た型紙。どっちがいい型紙?*

型紙を作った人の経験や技術によって変わってくるものなので、「この方法で作ったからこうです」とは言いがたい部分があります。

パタンナーの技術レベル面から考えると、平面裁断しかできない人よりも立体裁断ができる人のほうが経験があり、いい型紙を作れるはずです。寸法という数字だけでは見えないものを形にするのが立体裁断。「寸法的には小さいのに着たら動きにくくない」そう感じるものは立体裁断の型紙に多く存在するのは事実です。

ひとつ言えることは、出来上がった型紙はそれが完成品ではありません。型紙から洋服を作り、更に人間が着て動いて初めて完成です。
動きやすさ、シルエットの美しさ、生地と型紙の兼ね合いも大切ですが、縫いやすさも重要です。色んなことが考えられている型紙がいい型紙と言えるのではないでしょうか。


*立体裁断はできなくてもいい?*

パタンナーを仕事とする場合は、自分の経験を超えた未知なるものにチャレンジする時に困ると思います。それはデザインであったり時には素材であったり。
カジュアルでダボっとした服しか作らないのならば平面だけでもかなり作れますが
よりフィットした服など平面だけでは見えにくい世界もありますので。

趣味で型紙を作る場合はできなくてもどうにかなります。
でも、補正をする場合はできたほうが、よりよい補正ができるようになります。


*ドレーピングが上手になりたい*

数をこなすのが一番です。
そして、生地の地の目を縦横きちんと直角にアイロンを掛けられるのは最低条件。

次に、地の目が見えるようになることが大切。
ドレーピングで言われるのは「布の声を聞く」というもの。
布の性質を知り、無理にひっぱたリ伸ばしたりすることなく
布の特性を生かして最適な場所にピンを打つ。
そんな風にしてできたドレーピングを分解して平面(紙)に写し取ると
きちんと寸法もあっているものです。

道具としては、ボディ(人台)、はさみやピンを使いますが、ピンは普通のマチ針ではありません。シルクピンと言われるもので、虫ピンみたい形状をした細い針です。
マチ針では太過ぎてドレーピングがきれいにできません。



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